こんにちは、東京・神奈川で眼瞼下垂の治療を行っている形成外科・美容外科の奥村仁です。
今回は、病院に受診をしてから、手術を受け、落ち着くまでの経過についてまとめてみました。
ご自分の症状から(症状に関しては以下の記事を参考にしてください)、眼瞼下垂ではないかと心配な方は、まず、病院に受診していただきます。
受診
眼瞼下垂の確定診断、手術適応の有無、治療方針の決定を行います。
手術をする日は、術後2週間程度内出血や、腫れがでても問題ない時期をご本人にお聞きして、決定します。
問診
①発症時期
⑴子供の頃から
⑵成人以降 年前から
②症状
⑴瞼が重たい・開きづらい
⑵上方が見えづらい,瞼を手で持ち上げると見えやすい
⑶上まぶたの奥が痛い
⑷頭痛,肩凝り
⑸症状に著明な日内変動がある
●既往歴等
①眼球,眼瞼関連事項
⑴コンタクト使用歴(ソフト・ハード 年)
⑵視力・乱視度
⑶緑内障
⑷白内障
⑸ドライアイ
⑹眼球・眼瞼の外傷,手術歴
②病歴
甲状腺機能亢進症,脳梗塞,高血圧,糖尿病,心筋梗塞,不整脈等
③使用薬剤
⑴緑内障(プロスタグランジン関連点眼薬)
⑵前立腺肥大症(アドレナリン拮抗薬)
⑶精神安定剤,抗不安剤(ベンゾジアゼピン系薬剤)
⑷抗血栓薬(抗凝固薬・抗血小板薬), 血管拡張薬
問診から分かること
①発症時期
⑴子供の頃から→先天性→まぶたを開ける筋肉(上眼瞼挙筋)の動きが悪い人が多く,吊り上げ術が必要となる症例もあります.
⑵成人以降 年前から→後天性→発症してから長期間放置していると治りにくくなります.
②症状
⑴瞼が重たい・開きづらい→眼瞼下垂による主症状です.
⑵上方が見えづらいが瞼を手で持ち上げると見えやすい→緑内障等で上方の視野欠損がある場合,まぶたを手で持ち上げても見えやすくなりません.
⑶ 上まぶたの奥が痛い→まぶたを開ける時,上まぶたの奥にある上眼瞼挙筋やミュラー筋が強く収縮し続けると痛みを生じます.
⑷頭痛・肩凝り→まぶたが開きづらくなると,無意識に歯を食いしばったり,眉毛を上げて見ようとします.その際働く側頭筋や後頭前頭筋が過度に収縮し続ける事により緊張性頭痛や肩凝りが引き起こされます.しかし,頭痛や肩凝りには,まぶた以外の原因もあるため,眼瞼下垂術後に完全によくなるわけではありません.
⑸日内変動(午前中はまぶたが開きやすいが,午後になるとまぶたが開きづらい)→日内変動が顕著だと重症筋無力症の可能性があります.
●既往歴
①眼球・眼瞼関連事項
⑴コンタクト使用歴(ソフト・ハード 年)
→ハードコンタクト使用歴が長い人に眼瞼下垂症が起こる事があります.コンタクトをはずす時にまぶたを横に引っ張る事が多いため,徐々に上眼瞼挙筋腱膜が伸びたり,瞼板から外れて眼瞼下垂症を引き起こします.左右差を認める事も多いです.手術後には,スポイト等の補助器具を使い,まぶたを横に引っ張らないでコンタクトを外せるようにして頂きます.
⑵視力・乱視度
→手術による眼瞼と眼球の接触圧が変わり乱視が変化する事があります.術後3〜6ヶ月で検眼して,眼鏡やコンタクトの調整をして頂きます.
⑶緑内障
→緑内障の第一選択薬のプロスタグランジン関連薬で眼瞼下垂や眼瞼陥凹を起こす事があります.
⑷白内障
→乱視等が術後変化しやすいため眼瞼下垂症の手術を先に行い,3〜6ヶ月して術後経過が安定してから検眼結果を元に白内障する事をお勧めしています.
⑸ドライアイ
→術後一時的にドライアイ症状が強くなり,半年程度で術前と同じ程度まで回復します. 眼が大きく開いて涙が蒸発しやすくなり, 涙を排出するポンプ機能が改善されるためだと考えられます.
⑹瞼の外傷や眼球の手術で使用される開瞼器等で上眼瞼挙筋や腱膜が損傷されると,眼瞼下垂症となります.
②治療中の全身疾患
●甲状腺機能亢進症
→片側性の眼球突出を認めると,反対側がヘリング現象により眼瞼下垂症になる事があります.
●脳梗塞等
→動眼神経麻痺を起こすと,動眼神経由来の上眼瞼挙筋の動きが悪くなり,眼瞼下垂となります.
●高血圧,糖尿病,不整脈,心筋梗塞等
→治療中の疾患がある場合には,主治医に局所麻酔手術の可否,周術期の注意点について確認を取ります.
③使用薬剤
●緑内障点眼薬プロスタグランジン関連薬(キサラタン®、タプロス®、トラバタンズ®、ルミガン®)→ PAP(プロスタグランジン関連眼窩周囲症)と言われ,副作用に眼瞼下垂や眼瞼陥凹を認めます. 上眼瞼挙筋の働きを弱くする副作用があります.
●前立腺肥大症(アドレナリン拮抗薬)
→ミュラー筋の収縮力を低下させ,眼瞼下垂の原因となりえます.
●精神安定剤,抗不安剤(ベンゾジアゼピン系薬剤)
→長期投与により,眼瞼下垂と同じように開瞼障害を起こす眼瞼痙攣を誘発する事があります.
●抗血栓薬
抗凝固薬(血流停滞部のフィブリン血栓抑制)
抗血小板薬(動脈硬化部の血小板凝集抑制)
●血管拡張薬
→抗血栓薬や血管拡張薬は術中,術後出血の原因となりうるため,主治医に確認をとった後,休薬して頂く事が多いです.
手術
手術は局所麻酔で行います。
手術時間は術式や、程度によって違いますが、およそ1時間から1時間30分程度かかります。
術後
(1)抜糸まで
術後3日間は、出血や血腫などの予防として、顔が赤くなるような行為(運動したり、お酒を飲んだり、入浴したり、頭をかがめたりするようなこと)はひかえていただきます。
腫れ(腫脹)の予防には、患部周辺を、よく冷やしていただくことが重要です。
特に術後3日間はアイスノンや保冷剤、冷たいタオルなどで冷やしましょう。
また、横になると、顔がむくみやすいので、日中は座位で冷やすようにしましょう。
シャワー浴や洗顔は、創部をごしごしこすらなければ、手術の次の日から可能です。
顔を洗って傷をきれいにした後に(消毒の必要はありません。)眼軟膏を塗布していただきます。
(2)抜糸
術後5~7日目に行います。
(3)術後診察
抜糸後の診察は、通常、3回行います。
術後1か月、術後3か月、術後6か月です。
術後1か月は、傷が赤く、硬くなりやすい時期です。
睫毛から切開線の間にまだむくみが残っており、二重幅がやや広い状態です。
普段の痛みはほとんどありませんが、洗顔などで触ったときにピリッと痛みがでることがあります。睫毛周辺の皮膚の感覚は少し鈍いことが多いです。
術後3か月は、ほぼ瞼の腫れがなくなり、形としては完成に近い状態です。
傷の赤みや硬い感じもかなり、改善しております。
痛みはほとんどないですが、睫毛周辺の皮膚の感覚はまだ鈍い方が多いです。
術後6か月で、順調な経過の患者様は、定期受診が終了となります。
睫毛周辺の感覚麻痺は6割は改善しており、日常生活には支障はありませんが、8割から9割回復するには1年近くかかります。
傷の術後経過
①皮内・皮下出血斑
②腫れ(腫脹)
③傷の赤み
④傷が硬い(硬結)
皮内・皮下出血斑
皮内・皮下出血斑は程度の差はあれ、必ず、術後認めます。
範囲が広い人は上まぶただけでなく、下まぶたまで広がることがありますが、必ず時間の経過とともにうすくなってきます。
大半の人が2週間程度で肌色に戻ります。傷の周囲は、女性では、お化粧でカバーしても構いません。
腫れ(腫脹)
腫れ(腫脹)は術後2日目くらいがピークで、徐々に引いていき、術後1週間くらいで強い腫れは取れます。
腫れぼったい感じが完全になくなるのには、2か月程度かかります。
術後早期の腫れ(腫脹)の予防には、患部周辺を、よく冷やしていただくことが重要です。
特に術後3日間はアイスノン・保冷剤や冷たいタオルなどで冷やしましょう。
傷の赤み
傷の赤みは術直後よりも術後3週間程度の時期に強い時期がありますが、徐々にひいてきて、術後3か月くらいの時期には目をつぶっていても、わからなくなる程度まで引くことが多いです。
硬結
硬結とは切った部分が、傷が治る過程で硬くなることですが、術後3週間くらいまでの時期は傷が硬く感じる時期があり、徐々にひいてきて、術後3か月くらいの時期には気にならなくなることが多いです。
最後に
眼瞼下垂でお悩みの方は一度お問い合わせください。
当サイトは形成外科医 奥村仁のポータルサイトであり、クリニック名ではありません。