1眼瞼下垂(がんけんかすい)とは
眼瞼下垂(がんけんかすい)とは?~あなたのまぶたは大丈夫?~
眼瞼下垂とは,上まぶた(眼瞼)が病的に下がり,黒目(瞳孔)の一部または大部分を覆ってしまう状態です.単に「まぶたが重い」,「見えづらい」,といった眼の問題だけではなく,頭痛や肩こり,おでこのシワなど,全身に様々な症状を引き起こすことがあります.
眼瞼下垂の種類:真の原因を見極めることが重要です
眼瞼下垂には,まぶたの「どの部分」が下がっているかによって,大きく分けて2種類あります.原因や治療法が異なるため,正確な診断が不可欠です.
| 種類 | 特徴 | 原因 | 治療の対象 |
| 瞼縁下垂※(真の眼瞼下垂) ※当ホームページでの呼称 | 上まぶたの縁が下がっている状態 | 上まぶたを挙げる筋肉(上眼瞼挙筋・ミュラー筋)や神経(動眼神経・交感神経)の問題 | まぶたを開ける筋肉の手術 |
| 皮膚下垂(偽性眼瞼下垂) | 上まぶたの皮膚がたるんで,瞼縁よりも垂れ下がっている状態 | 主に皮膚のたるみ(上眼瞼皮膚弛緩症) | 余分な皮膚の切除 |

瞼縁下垂(真の眼瞼下垂)も皮膚下垂(偽姓眼瞼下垂)も視野障害を生じている場合には,眼瞼下垂の保険手術として行われます.)


青い線・点線の部分が下がるのが瞼縁下垂
赤い線の部分が下がるのが皮膚下垂です
どなたにも起こりえます
先天性:生まれつきまぶたの開きが悪い
後天性:加齢によるもの,ハードコンタクトレンズの長期使用,神経麻痺,外傷など
片側だけではなく,両側におこることもあります.初期には,額の筋肉を使ってまぶたを開こうとする(代償運動)ため,ご自身では気づきにくい場合もあります.
2眼瞼下垂の症状~まぶたの下がりが引き起こす問題~
1.視機能の低下と目の疲労
- 視界が狭くなる
-
特に上方が見えづらくなり,暗くみえる.
- 目の重さ・開きづらさ
-
常にまぶたを開こうと過度に力を入れるため,目の奥に痛みを感じることも.
2.全身症状(まぶたの下がりによる連鎖)
頭痛・肩こり・めまい・吐き気
視野を確保しようと,無意識に眉毛を上げる,顎を突き出す,頭を後ろにそらすといった無理な姿勢をとるため.
3.見た目の変化(美容的な問題)
- 眠たそうな目つき
-
瞳孔が隠れる
- 額の深いシワ
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眉毛を上げる代償運動による.
- 二重の幅の変化
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二重が狭くなったり,逆に広がりすぎたり,二重のラインがなくなったりする.
- まぶたのくぼみ
-
まぶたの奥の脂肪(眼窩脂肪)が引き込まれるため.
「最近,額のシワが深くなった」「眠そうだと言われる」と感じたら,それは眼瞼下垂のサインかもしれません.


3眼瞼下垂の原因~複合的な要因を正確に診断~
眼瞼下垂の原因は一つとは限りません.加齢に伴う腱膜の劣化と,長年のハードコンタクトレンズの使用,さらに皮膚のたるみなどが複合しているケースが多くみられます.
| 瞼縁下垂 | 皮膚下垂 | |
| 先天的 | ①上眼瞼挙筋の低形成 ②腱膜の可動制限 | ❶挙筋腱膜の眼輪筋穿通枝が低形成 ❷前葉(皮膚・眼輪筋・皮下脂肪)が厚い |
| 後天的 | ③加齢による腱膜劣化 ④加齢による上眼瞼挙筋の可動域低下 ⑤ハードコンタクトレンズの長期使用 ⑥神経麻痺(動眼神経・交感神経) ⑦炎症 ⑧外傷 ⑨腫瘍 | ❸加齢による皮膚皮下組織の菲薄化 ❹眉毛の動きを伴った開瞼 ❺紫外線による光老化 ❻アイメイクや洗顔等の摩擦刺激 |



原因は1つだけとは限りません.
典型例
生まれつき目が細い一重の人が,10代からハードコンタクトを使用していて,40代頃から瞼が重たくなってきて60代になったら同僚から眠そうだと言われるようになって受診.
受診時,瞼縁下垂と皮膚下垂の両方を認める
瞼縁下垂の原因
先天的原因① 腱膜可動制限
後天的原因③ 加齢性腱膜劣化⑤コンタクト
皮膚下垂の原因
先天的原因❶挙筋腱膜の眼輪筋穿通枝が低形成
後天的原因❸加齢性皮膚菲薄化❹眉毛を動かす開瞼
4眼瞼下垂の治療方法~当院の専門的なアプローチ~
当院では,患者さんの症状や原因,ご希望の見た目を詳細に診察し,最適な手術方法をご提案します.
①瞼縁下垂の治療
A開瞼筋群に対する手術→詳細はこちら
1ミュラー筋短縮
2挙筋腱膜前転術
3挙筋腱膜+ミュラー筋前転術
B前頭筋吊り上げ手術
②皮膚下垂の治療
1眉毛上皮膚切除
2眉毛下皮膚切除(一番多い)→詳細こちら
3重瞼部皮膚切除→詳細こちら
A開瞼筋群に対する手術
まぶたを開く筋肉(上眼瞼挙筋(腱膜),ミュラー筋)を瞼板(けんばん)という軟骨様組織に糸で固定する手術を行います.手術中に1〜3のどの方法にするか判断します.
B 前頭筋吊り上げ手術
眉毛を上げる筋肉(前頭筋)と瞼板の間に,自分の組織(大腿筋膜,深側頭筋膜など)・糸・人工物(ゴアテックス)などで橋渡し(移植)をする手術を行います.眉毛をあげることにより,まぶたを開くことができるようになります.
開瞼筋群の動きで術式を決めます
動き良→→→→→→→→→→→悪
A(ミュラー筋→腱膜→両方)→B吊上
瞼縁は下がっているが,まぶたを上げる筋肉の動きが保たれている場合は,A開瞼筋群に対する手術を行います.(原因では②腱膜の可動制限③加齢性に腱膜劣化⑤コンタクトはこのタイプが多いです.)
筋肉の動きが非常に悪く,代償的に眉毛が上がっている場合にはB前頭筋吊り上げ術を行います.(原因では①上眼瞼挙筋の低形成④加齢性に挙筋可動域低下⑥神経麻痺はこのタイプが多いです.)
皮膚下垂の治療は,瞼縁より垂れ下がった皮膚の切除により,視野を改善し,まぶたを開ける時の重たさを取り除く目的で行いますが,まぶたの形が変わるため,見た目にも注意して治療を選択します.
皮膚下垂を訴えて受診する中高年の患者では,瞼縁下垂を合併したり,眉毛位置が前頭筋の作用で挙上していたり,逆に皺眉筋や眼輪筋の作用で下降していたりと様々な症状を呈しています.そのため,上まぶただけでなく,上顔面(上まぶた~眉毛~額)を診察し,必要な術式を選択し,ときには複数の術式を組み合わせて治療を行います.



私の手術症例では,眉毛下皮膚切除が7割,重瞼線皮膚切除が2割,眉毛上皮膚切除が1割くらいなので,眉毛下皮膚切除の適応となる患者さんが多いです
5眼瞼下垂の治療法の選択と当院のこだわり
眼瞼下垂の治療は,単にまぶたを上げるだけでなく,額・眉毛・上まぶた全体のバランスと,患者さんのご希望の二重の形・見た目を考慮して行っております.


瞼縁下垂がなく,皮膚下垂のみの場合はSt3へ.
瞼縁下垂が軽度だが患者さんの訴えが瞼縁下垂>皮膚下垂の場合には瞼縁下垂の手術を行います.
瞼縁下垂が軽度で患者さんの訴えが瞼縁下垂<皮膚下垂の場合にはSt3へ進みます.
上まぶたの瞼縁が瞳孔を隠す中等症以上の瞼縁下垂合併症例では,瞼縁下垂の手術を先に行います.その際に重瞼部皮膚切除を同時に行うこともできますが,目標位置まで下垂が改善しない可能性もあるため,術前に皮膚の切除量を正確に決められません.私は軽症例を除き瞼縁下垂の手術後6ヶ月以上あけてから,皮膚下垂の手術が必要かどうか判断しています.
眉毛が低い患者さんでは,眉毛上皮膚切除や前額部リフトを行い眉毛〜上まぶたを挙上します.術後,眉毛位置が正常に改善してから,上まぶたのたるみの程度を診察し,治療方針を検討します.
上まぶたのたるみの術式選択には,ブジーという針金の様な器具を用いたシミュレーションを行います.鏡で患者さんに確認してもらいながら二重をシミュレーションします.❶二重の形(末広型・平行型等)❷見かけの二重幅❸二重の厚み❹眉毛位置の変化などに注意して確認を行います.
シミュレーションの二重が気に入った患者さんで,ブジーの位置が瞼板の高さよりも低い場合は皮膚切除しない重瞼術を行います.ブジーの位置が瞼板の高さよりも高い場合は重瞼部皮膚切除を併用した重瞼術を行います.
シミュレーションをした二重が気に入らない患者さんで「一重を二重にしたくない」,「昔の二重のままでいたい」等,重瞼形成が不要な場合は,眉毛下皮膚切除を行います.「一重を二重にしたい」「睫毛内反」「二重に左右差がある」など,重瞼形成を要する患者さんでは,不自然にならない低い位置での重瞼形成と眉毛下皮膚切除を2回に分けて行います.
「眼瞼下垂の治療」は「機能回復」と「美しさ」の両立が大切です.
[目がしっかり開くようになった」「頭痛が消えた」といった機能改善はもちろん,「自然で若々しい目元になった」とご満足いただけるよう,見た目にも徹底的にこだわった治療を行います.
まぶたの重さ開きにくさ,つらい肩こり・頭痛にお悩みの方は,まずはお気軽にご相談ください.
